Malinconia
魔女の目にも涙 前編
魔女の目にも涙 前編
いつも通り、ゼロの指示通りに作戦は決行され、勝利をおさめた黒の騎士団。
ゼロは蜃気楼から、黒いマントをたなびかせて降り立つ。
「ご苦労だったな。各自、部屋で休憩を取るように。会議は3時間後に行う。」
ゼロのそのいつも通りの言葉に、各々が「了解。」や「承知。」などと返事をすると、幹部の人々以外は休憩を取るべく自室へ戻る。
幹部の人々は、いつもこの後、ゼロからの次の作戦についての大まかな説明が残っているので、まだ収納庫に残る決まりとなっている。
「・・・なんだ、お前。早く部屋へ戻れ。」
ゼロは一人の人物を指さして、怪訝そうに言った。
それもそのはず、もう部屋に戻っていなければならない、ここに用などあるはずがない下っ端構成員が一人だけ収納庫に残っていた。
「戻れ、と言っている。聞こえていないのか?」
「・・・て・・・る・・・・」
「なんだ?はっきりと話せ。聞き取れない。」
「殺してやる!」
その男は胸元のフォルダーから小型の拳銃を取りだした。
「あ、ゼロ!危な・・・」
CCは目を見開いて、ゼロに飛びつかんばかりに駆け寄る。
カレンも表情をガラリと変えて、ゼロに駆け寄ろうと足を上げたが、遅すぎた。
パァァァァァン
乾いた破裂音が、さほど広くもない収納庫に木霊した。
ゼロのマントがひらりと揺れて、ゼロの後ろの壁を、銃弾が抉る。
まるでスローモーションでもみているように、ゼロはゆっくりと、地に落ちた。
「ぜ、ゼロ!ゼロぉ!」
カレンが叫ぶ。
CCも地に伏せるゼロを見て、顔を真っ青にした。
カレンがゼロを抱えようと、ゼロの体の下に手を滑り込ませる。
すると、ぬるっとした生暖かい感覚に、カレンは驚いて手を引き抜いた。
そして、自身の手を見て、目を見開く。
カレンの手がゼロの血液によって、真っ赤に染まっていた。
「い、いや!いやよ、ゼロッッ!イヤァァアあぁぁーーーー!」
「ゼロ!ゼロ!おい、返事をしろ、ゼロ!!!」
あの、CCも血相を変えて、ゼロの名を呼ぶ。
慌てて扇はラクシャータを呼び、ゼロを撃った裏切り者を藤堂が押さえつける。
「う・・・嘘だ、ゼロ!おい、返事をしてくれ!私を置いていかないでくれ!」
CCの異様なまでの焦りそうに、普段のCCを知る人々は驚いた。
あのCCが、泣いていた。
CCは金色の瞳を涙でにじませ、必死でゼロ、ゼロと呼びかける。
そんな時、収納庫の扉が乱雑に開かれた。
「ちょっと!ゼロが撃たれたって本当なの?」
「ラクシャータさん!」
ラクシャータが到着した。
そして、今繰り広げられている光景を見て、絶句する。
カレンが「ラクシャータさん!早く!」とラクシャータを催促すると、ラクシャータは急いで血溜まりに伏せるゼロへと駆け寄った。
「・・・弾は貫通してるみたいね。とりあえず手術室へ運んで!」
「は、はい!私が運び・・・」
「私が行く。ゼロの負傷は知られてはならない。口止めを頼む。」
「・・・・・・じゃあ、CC。ル、ゼロをお願いするわ。」
CCは「了解した。」と言うと、ゼロを軽々と抱き上げて、かなり焦った様子で収納庫から出た。
ラクシャータも慌てて後を追い、収納庫にはゼロの負傷が目に見えて感じられる大量の真っ赤な血液と、唖然とする幹部の人のみが残された。